【再掲】「国土強靭化」を地方に丸投げした自公

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本を、取り戻す」の旗印の下、安倍晋三氏率いる自民党が推し進めたのが国土強靭化(レジリエンス・ジャパン)だった。

 


その対策費は巨額にのぼっている。

国土交通省の試算によるところでは、今後10年間で60兆円〜70兆円規模の社会インフラ維持費・災害復旧費がかかる見込みだという。

2016年度当初予算における公共事業費は5兆9000億円であるが、長期的には、200兆円を拠出して造るのが「災害に強い日本」となる。


それでは、肝心要の熊本地震において、安倍自民党の「国土強靭化」は有用性が認められたか。


もっとも、個人の所有物である木造住宅や商店が一部破損・全壊してしまったと観察され、その被害内容を「国土強靭化」のせいにするのは、これまた おかしい。

だが、〈熊本県八代市は17日、市役所本庁舎が余震で倒壊する可能性が高くなったとして、封鎖すると発表した。本庁舎の機能は二つの支所などに移す。本庁舎は1972年建築で、現行の耐震基準は満たしておらず、2020年度までに建て替える予定だった〉(4月18日 「朝日新聞デジタル」)の例は、この「国土強靭化」が、建設業界と地方の歓心を買う お題目であったと詳らかにした。

災害時、市役所庁舎は行政機関の所管するなかで「センター」の役割を担う建造物だから、インフラのなかのインフラと呼んで差し支えない。

 


財務省は2016年度予算案で、インフラ整備などに使う公共事業費を15年度の5兆9711億円から微増とする方針だ。増加は4年連続となる。国土強靱化を名目とした増額要請が根強いものの、厳しい財政状況や建設業界での人手不足を踏まえ、防災対策や古くなった橋や道路などの維持・補修に重点を置く〉(12月21日配信「日経プレミア」)


この記事を書いた日本経済新聞の記者が一定の知識水準に達しているかは検討が要るが、財務省の主張する「国土強靭化」とは〈防災対策や古くなった橋や道路などの維持・補修〉ではなかったという。


〈防災対策や古くなった橋や道路などの維持・補修に重点を置く〉という財務省の予算配分が地方公共団体に伝わっていたどうかかも気になる。なぜなら、八千代庁舎の建て替えは当該の熊本県知事の差配によって年次を見送りしており、国が一体となって働くべき「国土強靭化」が、あろうことか、指揮監督の欠如で地方に丸投げされていたのだ。

 


参院選において「国土強靭化」は おおいに議論が必要である。

政権交代後の自公は総額30兆円をばら撒いてなお、指揮監督の欠如から熊本大地震における「センターの不在」を招いてしまったからだ。

 

 

さて、クローズアップされるのは震源地の震度数だ。これは1995年 阪神淡路大震災、2011年 東日本大震災に匹敵する大震災の数字だが 、内閣府のいうとおり たしかに現時点でも「大震災級ではない」と思う。

ただし、自民党による改憲案では、 熊本地震でさえ、これが「緊急事態条項」に該当し、内閣府・見解の出す政令が法律に化ける可能性があるわけだ。

 

熊本地震が「大震災級ではない」とする内閣府・見解は、10パーセントへの消費税率引き上げ という経済を めぐるもの。図らずも 「大震災」か「大震災ではない」か の線引き作業において、国 自身が その認定機関であることを ようやく浮き彫りにしたのである。