【軽減税率】外食業界幹部が明かす「線引きバトル」とは?










門徒外の者でも業界誌には押さえるべきデータがある。『Food Biz』という雑誌は一般週刊誌に比べれば知名度は低い。だが今の政治情勢に鑑みて「外食産業の声」を聴いてみよう。


同誌79号のインタビュー記事によると、ロイヤルホストホールディングス代表取締役の菊地唯夫氏が昨年12月25日、自民党幹事長の谷垣禎一氏らと都内レストランで食事をともにした、と述べている。菊地氏は社団法人・日本フード協会の副会長を務める「外食産業の当代」であり、この会食のセッティングも 実は軽減税率に あった。

与党合意は「酒をのぞく食品全般」である。15日に自民党税制調査会が決定したものの、そこに至るまでは「外食」をめぐって一悶着。



首相官邸では来夏の参院選を見据え、菅義偉官房長官が公明との協力を重視。自民は対象品目を「生鮮食品」に限る考えだったが、菅氏は「公明は受け入れない」と突っぱねた。
 「菅氏VS.谷垣氏」という構図の中で、首相は菅氏に軍配を上げた。党内からは「谷垣氏は幹事長を辞職するのでは」との声も出た。だが、谷垣氏は周囲に「幹事長が辞めるということは制度に問題があることを意味する。国会で答弁する麻生(太郎)財務相が野党の攻撃を受けてしまう」と打ち消した。
 交渉の最終局面で、財務省や宮沢洋一税調会長らが対象を「外食」まで広げる案を推し、自民は11日に公明に提案。必要財源は1・3兆円に膨れ上がった。自公のやり取りで国会答弁に立つ財務相の了承を得る必要があるとなり、翌12日、谷垣氏が麻生氏の説得に当たることになった】(『朝日新聞デジタル』12月16日付)




要するに、こうだ。財務省は線引きがしやすく事業者に負担をかけずに済む「外食を含む」1兆円プランの軽減税率導入を提案したわけだが、財政再建主義の谷垣氏は「内食のみ」というスタンスを崩さなかった。菊地氏が谷垣氏と会食した25日は「外食を含む」は ありえない情勢だった。与党の決定事項だからだ。それでも その席で菊地氏が業界団体の定義と前向きして伝えたリーフ・ポイントは「外食は生活インフラ」との ことだった。たしかに9割方は旅亭の暖簾をくぐりはしない。


飲食業界全体の雇用者は500万人以上ともいわれる、裾野の広い産業だ。今回、財務省が「外食を含む」を わざわざ提案したにもかかわらず いわば「流通業界」の方をとった自民党はこれらの票をこぼす可能性がある。日本フード協会の菊地氏が 舌鋒鋭い反永田町の業界誌のインタビューに応え、谷垣氏に軽減税率を認めるよう直談判したことを明かした衝撃。それは、「たばこ税」の税率のように業界団体同士の「本部詣で」が繰り返される明日をも語っているのである。