解散の条件は滋賀県にあり











「衆参同日選挙」をめぐる評論で気に留めてしまうのが、「補欠選で勝利すれば 可能性が大」とする記事だ。


たしかに、安倍首相は各新聞社世論調査で内閣支持率40パーセント台を維持しており、与党系が小選挙区において有権者の負託を得る、という公的儀式は、すなわち国政に とっての「舵取り」認可権である。
日本国憲法国会議員の身分を「国民の代表」と定めている。選挙というのは 地域ではなく、国民単位の選出に ほかならない。それを以ってして、ミクロで 今回 よかったのだから、マクロとなる日本全国の声を聴きたいだろう。安倍首相を慮る新聞社は  もっともだ。   

では、2014年7月16日に投開票が行われた滋賀県知事選挙は 何だったのか。前知事の推す前・民主党衆院議員が、経産省出身の与党系候補を破ったではないか。確定票数は253,728票/240,652票だから わずかの僅差だったものの、「与党落選」は秘密保護法の国会審議における強引さの国民的反発を招いたことは事実。安倍首相が衆院を解散したのは その4ヶ月後だった。


とすると、同年12月の「代表なくして課税なし解散」は こうした「与党落選」の状況ならびに経済産業大臣(当時)小渕優子氏、法務大臣(当時)松島みどり氏らの「政治とカネ」が噴出し内閣支持率が超低迷を記録するなか、(傍目には)破れかぶれ断行された選挙であって、解散の条件は、必ずしも「与党当選」ではないわけだ。


いや、戦後の日本が辿ってきた政治史に目を向けると違った側面がみえてくる。安定支持率を背景に与党の単独過半数が見込めるから解散するケースも ぞぞろあったが、党内反主流派からの批判をうけ、どうしても やりたいプランニングさえ成立できずじまいの首相(「舵取り」認可権喪失)。そこで、「機運を、変える」ための解散といったケースも過去にはあったわけだ。2012年の いわゆる「党首討論解散」は このケースが該当する だろう。




つまり、安倍首相に とって補欠選での「与党勝利」は、仕掛けなくともよい「舵取り」認可権を得たにひとしいのだ。新聞社の政治部記者はそこが不勉強だ。