【韓国総選挙】38議席獲得した安哲秀は「政治変革」期待の星か









韓国の総選挙(下院/定数300)は14日、投開票が行われ、与党・セヌリ党過半数割れをきした。ただし、122議席保守系無所属議員の復党を認めれば129議席の比較第1党となる。議会議長や国会委員会等のポストの配分では主導権を握うる一大勢力だ。
最大野党・共に民主党は123議席。ソウル首都圏などで 圧勝した。企業経営出身の安哲秀氏(アンチョルス)が常任共同代表を務める新党・国民の党も比例区などで健闘し38議席を得たため、事実上、韓国は「ねじれ国会」となる。



〈 【ソウル米村耕一】韓国の総選挙(定数300)は14日朝に開票を終え、与党セヌリ党は勝敗ラインとしていた過半数を大きく割り込み、さらに第1党からも転落した。朴槿恵(パク・クネ)政権への有権者の反発が明確に示されたことについて、青瓦台(大統領府)報道官は「国民の生活を守り、国民のために働く国会になることを望む。(総選挙は)そうした国民の要求の表れだと考えている」とのコメントを発表した/昨年12月の慰安婦問題をめぐる日韓両政府間合意について、野党側は日韓合意の再交渉を公約に掲げており、合意履行への影響も懸念される/任期4年の国会議員を選ぶ今回の選挙で、セヌリ党は改選前の146議席から122議席と大幅に議席数を減らした〉(4月14日 配信『朝日新聞デジタル』)





我が国に興味深いのは結果を左右する選挙制度だろう。小選挙区比例並立制を採用したのが韓国だからである。「一選挙区一当選者」の小選挙区では与野党のバトルロワイヤルとなるが、2012年、2014年の総選挙において日本の自民党が300議席近くを集めてしまったのも野党が複数候補をたて、与党系候補の業界団体や後援会名簿が そっくりそのまま懐に転がり込んだ絶対票ゆえだ。戦後最低の投票率も 与党に俄然有利なポイントだった。



ところが、韓国の総選挙においては、野党陣営がバッティングした。ようするに、共に民主党、国民の党 両党が小選挙区で競い一定の「死票」が生じた、にもかかわらず、与党・セヌリ党をニュースが報じるとおり 過半数割れへと 追い込んだわけである。

そのキーとなる人物が安哲秀氏だ。支持基盤は若い世代である。テレビ局3社による出口調査では総選挙における20代の推定投票率は49.7%だったが、この数字は前回比7.9ポイント増だったという。

韓国の若い世代はインターネットを使いこなす「市民派」だ。高齢者は 朴正煕に手を合わすへんけな 懐古主義者という もっぱらの評判であるものの、投票率は案の定 高いから韓国版「シルバーデモクラシー」とされる。
そうした世代間投票率の差がセヌリ党勢を硬直化したが、政治参加意識の磨かれた若い世代の層における今回の総選挙の投票率向上は 安哲秀=国民の党の第三政党化へ いきなり つながった。また、セヌリ党幹部に対する「落選運動」を展開したり、野党陣営における「当選可能候補」への投票行動を促す役割を果たしてったわけである。つまり、 この現象は、アメリカ大統領選「政治変革」韓国版と呼んでよい。

日本だって野党が票を喰いあったって、いい。「市民派」若い世代が 健全な野党候補にエールを送れば自民党の岩盤は砂上のナントヤラ。韓国の総選挙にみられた「受け皿」が出現すれば つぎは古狸、不倫議員、労組・業界団体議員の「落選運動」だろう。



〈こうした中、注目が集まっているのは38議席を獲得した野党第2党の「国民の党」だ。セヌリ党議席を合わせれば半数を超えるため、キャスティングボートを握る形になった。安哲秀(アンチョルス)常任共同代表は15日、「私たちは問題の解決を主導する国会運営の中心となる必要がある」と述べ、主導権を握る考えを示した〉(4月15日 配信『毎日新聞ニュース』)