【鈴木貴子氏 離党表明】じぶんの夢を掴むよう「野合」する新党大地









民主党衆院議員・鈴木貴子氏が自民党へ入党する見通しだ。

 【自民党は次の衆院選に向け、貴子氏の自民入りについて調整に動き出した。茂木敏充選挙対策委員長は4日、党北海道連会長の伊達忠一参院議員らとの会合で「大衆討議になじみにくいテーマなので、私と伊達会長、当事者で話し合うことに一任いただきたい」と発言。伊達氏らも了承した。
 党関係者によると、宗男氏は2014年衆院選の際に貴子氏の自民入りを打診。だが、当時、道連会長の伊東良孝衆院議員と地盤が重なることから道連内の反発が強く、見送られた。結局、民主から立った貴子氏は北海道7区で伊東氏に敗れたが、比例区で復活当選した経緯がある。
 移籍話が再燃したのは、昨年末の安倍首相と宗男氏との会談がきっかけだ。首相の狙いは道全域に広がる大地の組織だ。自民公認の新人と野党が統一を模索する候補がぶつかる4月の5区補選で、自民への協力を要請。参院選の前哨戦で確実に勝利し、野党共闘の出ばなをくじくためだ。
 宗男氏が補選で協力する考えを伝えると、首相は「貴子さんは評判がいいですね。自民党でぜひ育てたい」と提案。衆院選にも触れ、「いま大地とぶつかれば、道選出の衆院議員は半分になってしまう」と持ち上げたともいう】(『朝日新聞デジタル』2016年2月5日付)


反自民」の急先鋒だった「新党大地」が なぜ よりにもよって古巣へ舞い戻るのかわからない。どの地方よりTPPの経済的打撃をうけるのが北海道だからである。
北海道道庁はTPPが正式発行されたケースの試算を公表している。道内GDP1.6兆円減となり、雇用が11万人減になるとの予測値だ。一時期、TPPの経済効果をめぐり、農林水産省経済産業省(内閣系)が真逆の予測値を公表しマスコミを賑わせたが、北海道道庁による それは ニュートラルだろう。


国政選挙において北海道は自民党にとっての「逆風の地」であった。そこに「農家の怒り」が加われば さしずめ暴風雨だ。
日本農業新聞が2015年10月28日付の紙面で、内閣支持率の農政モニター調査を行ったのだが、支持率は18パーセント、不支持率は59パーセントだった という。 
自民党が地方選挙区で組織票を抱えるゆえんは全農にある。少子高齢化に伴い加盟人員は大幅に減ったものの、その数は 200万人にのぼるとされる。これは同党の支援団体であった旧 特定郵便局長会以上の実数だ。全員が「自民党」と書くわけではないが、三木武吉以来「農家は自民党へ」の連綿とした関係がある。
しかし、「全中・全農の市場化」を目玉とする全中改革関連法制が自民党ほか賛成のもとに国会をとおり、これまでとおりのフル稼働は おそらくバカでも しまい。TPPに対する「農家の怒り」が不支持率59パーセントにつながったことを考慮すると、自民党を見放すどころか、地方幹部が、自民党議員の積極的落選論へ向かう可能性もある。その最大の「逆風の地」が牛乳が おいしい・北海道だったわけだ。



ここへきての「新党大地」が自民党選挙協力を行い、鈴木貴子氏が入党するという話。よもや「渡りに船」だったのかもしれない。いうまでもなく、鈴木親子が権力サイドに「貸し」をつくるのだ。一部では鈴木貴子氏の国土交通省政務次官の就任が噂されている。理由は 単純だ。北海道開発局を 省内から引っ張り、地元への経済利権を運んでくる運び屋の役をやらせるため。所属こそ自民党議員であるが実質的には「新党大地」との「パーシャル連合」と呼んでいい。



新党大地」の13年参院選での得票数は35万2000票である。全道人口のうち2割が支持層とみられる。その集票マシンは「父親」のネームバリューに支えられており、自民党議員だったころに遡るが、地元のためと称して経済利権をもってきたからである。「新党大地」は 北海道の地域政党であると同時に鈴木親子の「個人商店」だったといえる。



では、この数字を どう扱えばよいか。2014年衆院選自民党得票率は29パーセントだった。北海道は風土として「反自民」の急先鋒だった気があるが、擁立を見送った「新党大地」の仮定得票率と足すと5割近かった。つまり、自民党単体としてみれば 北海道は 綱の効かない暴れ馬かもしれないし、逆の見方だと潜在野党である。ところが、「新党大地」を経済利権がからむ縁故的な「鈴木商店」と捉えれば必ずしも そうとはいえなかったのだ。北海道限定版の「保保合同」である。問題は鈴木親子の 目論見が あたるのか、という点に尽きるが、「反東京」の地域政党ではなかったのか。アイルランド行政府が英国首相のキャメロン氏と手を携えるのは よっぽど考えずらいのだが。




鈴木貴子氏が「新党大地真民主」(後、党名変更)の出身者だという経緯もある。この政党は、松山千春氏が共同代表を務める元祖「新党大地」とは 法令上、別団体であり、所属議員はみな 道内民主党系だった。2012年衆院選を戦い抜き当選者1名を輩出するなど、まずまずの勢力を誇った。が、鈴木貴子氏は落選の憂き目にあっている。この、唯一の現職国会議員比例区選出)が議員辞職を申し出たことにより、惜敗率2位だった女性が いよいよ国会議員となった。鈴木貴子氏である。




ということは鈴木貴子氏は「真民主」を足がかりに永田町へ 飛んできたわけだ。『超』が つく民主党議員ということになる。選挙関連法に よって、比例区選出の議員は 他党への 衣替えが 叶わない。鈴木貴子氏が自民党入り するにしたって当面は「無所属系」だろう。そのケースだと比例復活が ならず落選するかもしれない。ゆえに一度 議員を辞職し、「新党大地」の民主党との選挙協力同様、比例名簿順位1位を要求するとみられる。ちなみに前以て民主党が解党するかは微妙だ。解党した新しいグループの「副代表」といったポストを提示されれば 自民党入り断念も あり得る。
最後に 一言付け加えよう。「新党大地」がTPP容認派に転じて得票を伸ばすのは「真 野党」であろう。